~奏法の誕生と発展~
奏法自体はアメリカ南北戦争時代(1861年-1865年)、
軍楽隊にて【ジョージ・B・ブルース】氏が考案。
軍楽隊は戦火の中、
合図を送る為の演奏をしていました。
その合図が聴こえないなんて事になったら
味方の生死に関わるので、
長時間、大音量で合図が出せる様に
考案されたものと考えられます。
ここ超重要ですね!
長時間演奏=「自然な動き」で
なるべく疲れず大音量を出す
この「自然な動き」を奏法として
体系化し、「モーラーブック」
という教本を発表(1925年)したのが
【サンフォード・A・モーラー】氏。
「モーラー奏法」の誕生です。
90年前!!
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そのモーラーさんのお弟子さんには
【ジーン・クルーパ】【ジム・チェイピン】
といった超ビッグネームがいます。
【ジーン・クルーパ】氏は【バディ・リッチ】氏と
ライバル的存在であり、競演も多数。
先輩であるクルーパ氏の動きを引き継いで、
直接的ではないにしろ、リッチさんもモーラー奏法の
「自然な動き」を身に付けていったのだと思います。
そのリッチさんと親交が深かった、
【フレディ・グルーバー】氏も
「フレディー・グルーバーシステム」という奏法を確立し、
【ヴィニー・カリウタ】、【ニール・パート】
【スティーブ・スミス】、【デイブ・ウェックル】
といった一流ドラマーが師事しています。
また、一時期ドラムマガジン(日本の)でも、
特集が組まれていた【ニール・ソーセン】氏も
グルーバーさんのお弟子さんです。
モーラー奏法同様、元の概念は「自然な動き」を
演奏に利用するという点で共通しています。
もう一人のモーラーさん直弟子、
【ジム・チェイピン】氏のお弟子さんには
【トーマス・ラング】、【クラウス・ヘスラー】
といった超絶テクニック系ドラマーがいます。
さらにクリニシャンとしても有名な【ドン・ファミュラーロ】氏も
チェイピンさんのお弟子さんである事は有名です。
また、【ジョジョ・メイヤー】や【キース・カーロック】
といった超売れっ子もクリニックの中で「モーラー」
という言葉を使って実演、解説してますね。
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この様に軍楽隊のスネアだけの演奏から、
ドラムセットへの応用やスピード、
音色表現など、先人達が発展させながら、
またこれからも発展しながら、
受け継がれるであろうものだと思います。
そこで最初の質問。
Q,モーラー奏法って何ですか?
A,様々な流派(?)はあるものの、
一流ドラマー達が使う、
日常的な「自然な動作」を用い、
効率的に音量、スピードを補う奏法、
の、元になっているのが
「モーラー奏法」です。
といったところですね!
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ふむ。
じゃあ、、、
日常的な動作で効率的に
演奏するってどゆこと??
~日常的動作を考えてみよう!~
「ドラムやってます~!」
と言うと、大体の人に
「よく手足バラバラに動きますよね~!」
と言われます。
が、、、
「左腕だけ動かさないで演奏してみて」
と言われると、実は結構難しかったりしますw
皆さんも普段歩いている時は、
意識しなくても腕含めて全身動きますよね。
例えば腕だけ動かさない様にすると
「歩きにくい!」
と思うはずです。
演奏中も、音を出す出さない関わらず、
どこか一箇所でも動きを止めようとすると、
全体の動きがギクシャクしてしまうんです。
歩きを例えにしましたが、
腕、手指の動きで考えると、
「脇を締める」
「肘を必要以上に曲げる」
「手首を返す」
「スティックを握る」
といった事が、
「動きを止める行為」
にあたります。
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もう一つ日常の動きを例にして、、、
リモコンだったり、調味料だったり、
「少し離れた所にある物を取る」
また、鼻をかんだティッシュをゴミ箱に
「投げる」(行儀良くないw)
といった何気ない動作。
普段気にもしないと思いますが、
無意識に体から動いて取るはずです。
物を取る、持ち上げる、投げる、
といった動作をしようとした場合、
体側から動くのが自然な動きです。
ですからスティックを動かそうとした場合、
肩⇒肘⇒手指⇒スティック
の順番で動かすのが自然な動作になります。
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ここで、一般的に正しいとされる
ドラムの叩き方について説明しますね。
「脇をしめて構える。
スティックは人差し指と親指で握る。
叩くときは手首でスティックを真っ直ぐ振上げ、
音量に応じて肘、肩の動きを足していく。
叩く瞬間に手指全体を握りこむ」
、、、
日常的動作とは真逆なんですね。
もちろんこの叩き方の説明が
間違っているとは言いませんが、
自然な動きというよりは、
「ドラムを叩く為の動き」
といったところでしょうか。
特徴として、
「ドラムを叩いている満足感」
を得やすいのですが、
この満足感の正体こそ
「力み」
なんです。
大音量、ハイスピードを
両立させようとした場合、
最初に上げた「動きを止める行為」
が頻発(というかずっと)するので、
単純にしんどいですし、
無理をして続けると、
腱鞘炎やマメといった、
故障にも繋がってしまいます。
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「じゃあどうしたら力まず
自然な動作で演奏出来るの?」
、、、
「動きを止める行為」と
逆の事をしてあげればいいですw
「腕をだらーんとした状態から
適度に(90度くらいを目安に)腕を曲げる。
この時に脇をしめない。
手首のだらーんとした状態から
指先でスティックを摘んだ状態が構え。
叩くときはスティックからではなく、
肩(背中側)からスティックの先まで
波が伝わるイメージで動かす。
ヒットの瞬間、指を握り込むのではなく
打面に向かってスティックを離す。」
「動きを止める行為」
を徹底的に取り除く事こそ、
モーラー奏法の特徴である
無駄な力みの無い
リラックスした演奏
の第一歩になるのです。
~必要に応じて手指を「固定」する~
もう少し実践的なお話を。
主にグリップについてですが、
速い連打や安定したストロークに
非常に重要な概念です。
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モーラー奏法のポイントとして
脱力によるストローク、グリップ
と言うのは皆さんご存知だと思います。
音量、スピードが欲しい時ほど力を抜く、
というモーラー奏法の肝になる項目で、
超重要かつ感覚を掴むのが超難しいw
今回はその脱力に代表される、
ヒット時に握りこむのではなく指を離す
「オープングリップ」
を使う事が前提となります。
脱力が出来ていれば、
手の平が下を向いているときは
手首がだらーんと下がって
指が伸びる自然な形ですね。
が、、、
じつは脱力するだけでは
一定以上スピードはあがりません!!
なんだって!?!?
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ここで基本のグリップについて、
また日常の動作を例にあげてお話しますね。
箸を使う
字や絵を描く
歯磨きをする
PC文字入力
マウス操作
スマホいじり
等の動作をしている時の、
手の形に注目してみましょう。
、、、
手が固定された状態で
指先を動かす動作を
無意識でしていませんか?
この
「手は固定されてるけど
全ての指先が自由に動く状態」
が基本グリップだと思って下さい。
こんな感じ。。。
ポイントは
「全ての指が軽く曲がって
指先にスティックが触れている事」です。
(ペンや歯ブラシを持つ時の形、支え方と
似てるのがお分かり頂けると思います。)
曲がっている指先にスティックが触れているからこそ
必要なときに指を伸ばしてスティックを離せるんですね。
とにかく親指は握るのではなく支える程度。
小指側を「固める」という意識が超重要です!
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「ん?一箇所動きを止めると、
全体の動きの流れが
止まっちゃうんじゃあないの?」
と思われるでしょう。
今回のテーマにおける固定とは、
まず握りこむのではなく、
前述したような日常的動作で
基本グリップをする事。
そして、演奏時は、
リバウンドの処理時に、
どのタイミングで、どんな形で
どの程度手指を固めるか。
また、
オープンやリバウンドの処理で
グリップは常に変化しますが、
いかに速く基本グリップに戻せるか。
というところを意識して下さい。
基本グリップはゆるゆる。
「演奏中必要に応じて瞬間的に固定する」
と言えば分かりやすいと思います。
ちなみにですが、、、
自分の場合高速連打をする時、
オープングリップのままで、
手だけではなく、指も少し固めます。
脱力しているだけだと、
スティックのリバウンドに
手指が大きく動かされすぎて
ロスになってしまうんですね!
さらに音量が必要な時は、
薬指、小指にスティックを引っ掛けて
一打ごとに一瞬オープン
⇒素早く基本グリップに戻す
を高速で繰り返します。
(前腕の回転と併せて。)
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さらに実際の演奏では、
基本グリップのまま、
打面をつつくように
小さくタップ(pp~p)したり、
支点を中指に持っていって、
ふわっとオープンする事により、
柔らかい音(p~f)を出したり、
小指軸のままスティックを、
勢い良く放り投げて、
「パシッ」とした音(f~ff)を出したり。
手指の動きだけでも、
支点の移動やオープンの速さを
コントロールする事で
スピードはもちろんの事、
幅広い音色、音量の変化
もつける事が出来るようになります。
さらに腕全体の動きも
(腕の振り幅、重みのかけ具合、
回転のスピードコントロール等)
身に付いてくれば、
スピード、音色、音圧、の変化は
相当幅広いものになります。
一流と言われるドラマー達は、
こういったスピードや、
ダイナミクスのコントロールを
無意識レベルで使っているのですよ!
※紹介した写真のグリップは
基本の一つの形だと思って、
是非取り組んでみて下さいね!
(状況に応じた様々なグリップがあります!)
~腕の自然な動きを体系化して覚えよう!~
では、まとめです!
こちらの動画をご覧下さい!!
前半説明部分では、
動きを止めながら
説明していますが、
実演部分では、
「肩、肘、手指」
が常に動いていたのが、
お分かり頂けたと思います。
ちなみに今回の動画では、
スネアのパッドのみですが、
シンバルやタムの移動が絡めば、
腕の動きはさらに複雑になります。
しかし、シンバルやタムに移動する際も
基本的な動きの概念は変わりません。
移動先での各ポジションを考える事も、
モーラー奏法をセットへ展開する
非常に重要なポイントですねっ。
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最後に各ポジションの
注意点を書いておきますので
参考にしてみて下さい!
ポジション1
・肘を曲げすぎない。
・体に肘を着けない。
・グリップは基本グリップ。
ポジション2
・手首をだらーんと。親指を下に向ける。
・グリップは指先で落ちるのを止める程度に。
・前腕を伸ばしすぎない。下げすぎない。
ポジション3
・基本グリップに戻す。
(慣性で手首が返りがちなので要注意!)
・スティックを腕の屈曲で引き上げない様に。
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「動きを止める動作」を省き、
「日常的動作」を演奏に生かす事が、
「リラックスした演奏」に繋がるのです!!